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…ん?
たしかに
…人の気配がする…
…だけど眠すぎて
目が開けられない…
「…ヌナぁ…」
私のことを控えめに呼ぶ声…
……うん…
声の主は分かりました
次に言うであろう
言葉も…
だいたい察しがつく…
「‥‥‥」
「…ねぇヌナあ…」
返事を返さない私の
足の裏を
『ツンツン』と触ってくる…
くすぐったい…
「‥‥‥」
「…ねぇヌナあ…」
「………んー…」
「……温かいココア飲みたい…」
人の足の裏を
そっとなぞりながら言ってくる…
彼は
今日も
眠れないのか…
「…んー…分かった…」
意を決して起き上がる
まだ眠たい目を
無理矢理開けて
彼の方を見ると
目が合った…
彼は私から目線を
斜め下に逸らしながら
少し申し訳なさそうに
『えへへ…』と笑う…
それ以上は
何も言わずに
『うんうん』と私は頷きながら
キッチンに向かい
あま〜いホットココアと
自分用のコーヒーを淹れて
彼のいる
ソファに戻る
彼はソファの上で
自分の膝を抱えて座っている
そして
レースのカーテン越しに
もう少ししたら
夜が明けてくるであろう
薄ピンク色と
薄い紫色が
混ざりあったような
色の空を
『じーっ』と黙ったまま
見ている
「…はい、どうぞ…熱いから気をつけて…」
「…ありがとう…ヌナ…」
彼は
ココアを両手で
受け取ると
口を一文字にして
『ニコ』と笑う
私は
彼から少し距離をあけて
ソファの上に
彼と同じように
並んで座る
『…ズズッ……美味し…』
彼が美味しそうに
ココアを飲んだのを見てから…
私もコーヒーを
ひとくち飲んだ…
…もう…
朝か…
そろそろ
彼が練習に行く時間かしら…
なんて考えながら
『ぼーっ』と
レースのカーテンの向こうの空を
眺めつつ
コーヒーを飲んでいると
自分の片側の肩に
重みを感じた…
ココアを飲み終えた彼が
私の肩に頭を乗せて
なんの歌か分からないけど
ゆっくりとした
優しくて
心地良い
鼻歌を歌っている…
私の首筋にかかった
彼のフワフワの髪の毛が
こそばゆい…
昔、友達が飼っていたプードルを思い出すわ…
なんてよく分からない事を思い出しながら…
私も自分の頭を
彼の頭に持たれかけた…
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作者名:名無し85203号 | 作成日時:2023年6月30日 12時