行ったり来たり行き止まり

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ポッサムをユンギの家に持って中に入ると、本当に"さっき"帰って来たと分かる状況証拠があった。

リビングの隅に置きっ放しのスーツケース。
それからその上に乗った黒い大きいバッグ。
ソファの上には私が置いた荷物もそのまま。


「片付けはしなくて大丈夫なんですかね？」


余計な一言かもしれないが、あまりにもそのまま過ぎて聞かずにはいられなかった。
でも当の本人は、ダイニングテーブルの上に置いたポッサムとそれに合わせて食べるおかず諸々をテキパキとテーブルに出していて


「明日休みだから明日やるよ」


そう言ってキッチンから箸やら受け皿を取りに。
そのスピード感は余程空腹か、若しくは母国の味が恋しかったか、その二択しか感じられない。

どちらにせよ今片付けをして休むという頭はないという事で、私もユンギの向かい側の椅子に腰を下ろした。


「今回どこ行ってたんですか？」


「アメリカ」


「え？こないだ行ってませんでした？」


「アメリカってこっちからこっちまでめちゃくちゃ広いの、もしかして知らない？」


"こっちからこっちまで"とお箸を左右に動かしたユンギ。
でもそれがどうとかよりその後の小馬鹿にされた質問を否定する言葉が自然に出た。

あと、そんな今回はアメリカのロサンゼルスだとか、アメリカのニューヨークだとか、そこまでスケジュール知りませんし！という気持ちだ。
BTSファンの同期の情報網ならまだしも。


多めに作ったポッサムだったがあっという間に私達のお腹に入ってしまって。
満足したのかユンギは'そうだ'と言って、丁寧なご馳走様の後でソファの荷物を手に取った。

私はそんなユンギを横目に食器達をシンクに運ぶ。
家政婦の気分、再び。


「A」


ダイニングに戻るとユンギが見せてきたもの、否、私の頭にズボッと被せた物。
ヘッドホンだ。
私の使ってる物よりやたら軽い。


「新しいの買ったんですね」


「俺のじゃなくてAのやつね」


耳が覆われてるせいでユンギの声が小さく聞こえるから外そうとしたのに、外せなくなった。
驚いてる私に空き箱を器用に潰すユンギが目を細めて


「俺の歌聞くなら良いやつで聞かないと」

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