行ったり来たり行き止まり

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多分だけど、まだ泡だらけの食器を流してない事を理由にここにいちゃいけないやつだ。
冷蔵庫の中にまだ食べてない私が作った物があるのに、とかそんなのも。
まぁそもそも、私の為に作った物じゃないし。

音を立てたらまずい気もしたが、何しろ泡だらけの手では帰れない。
タッチレスの蛇口から水がザーッと音を立てて出てきて、今だけは音がやたら大きいと感じてしまった。

でもそのおかげで手から泡は流れ落ちた。
長さだけの食器を複数置き去りにするのは少々心苦しいが背に腹は変えられない状況だ。

恐る恐るユンギの向かった玄関に向かう。

やっぱり。
ユンギが開けたままのドアの先に、元彼女の姿。


「ユンギさん、手洗った(・・・・)ので私帰りますね！」


誤解を与えないように、不安を与えないように。


「また壊さないように気をつけて下さいよ、私も頻繁に手伝えませんからね」


よくまぁスラスラと嘘が出てくる。
自分でも驚く程。
ユンギが微かに"何の話をしてるんだ"って表情だったけれど、それを問いただされる前にサンダルを履く。

それから私を目で追う元彼女の顔を見て


「少し手伝ってって頼まれてやってただけなので、気にしないで下さいね」


'じゃあ'と。
元彼女にもユンギにも頭を下げて、自分の部屋に向かった。

私の部屋のドアが閉まる直前、ユンギが"야(ヤ)"と言った声が聞こえた気がしたけれど、定かではない。
閉まる直前だったから。


二回ユンギに会いに来て、三回目でやっと本人同士が会えた、と。
三度目の正直というやつか。
やっぱり会えた、か。

二人が一緒にいるのかいないのかは分からないけれど、冷蔵庫の物を今日中に処分してほしくて一応カトクだけ送った。


『冷蔵庫に入ってるのは小さめのケーキは今日中に食べて下さい。ユンギさんの誕生日もう過ぎちゃったんで、それも罪滅ぼしです』


と。
負担のないように。

返事が来る確率は、低い。
でもユンギがこれを見て相手が誰であれ、どんな形であれ、食べてでも捨ててでも今日中に処分してくれればいいのだ。

寝室にある充電スポットに携帯を置いて、お風呂に入るべくあれこれ抱えて洗面所に向かう。
私の作ったケーキなんかあの二人が食べるわけない、か。

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